研究概要 |
1.タマネギバエ幼虫よりスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)を精製するため、SODの各種クロマトグラフィーにおける挙動を調べた。その結果、60〜90%飽和硫安により塩析し、陽イオン交換体(5mM)には吸着されず、陰イオン交換体には2.5mMで吸着し、15mMで溶離した。銅イオンキレートクロマトグラフ、疎水性クロマトグラフ、ゲルろ過による分離は良好であった。これらのクロマトグラフを組み合わせて、SODを電気泳動的に単一になるまで精製した。タマネギバエのSODは分子量約16,000のサブユニット2個からなる分子量約32,000のホモダイマーであった。等電点(pI)は、5.3,5.5,5.7の3本に分離し、ヒトのSODと同様にCharge isomersがあることがわかった。 2.精製したSODに対するモノクローナル抗体を作製し、2系統(aSOD1H11,aSOD2B7)の樹立に成功した。その内の一つ、aSOD1H11はタマネギバエとタネバエのSODとのみ反応したが、aSOD2B7はこの2種の他、ショウジョウバエとも反応した。2クローンとも他の目の昆虫のSODとは交差反応性を示さなかった。 3.タマネギバエの幼虫に18種類のプロオキダントを投与し、SOD活性に対する影響を調べた。供試物質の中では、キサントトキシンと硫酸銅を投与した幼虫が最も高いSOD活性を示した。これは、酸化ストレスの増大に対して、昆虫がSOD活性を増加させることにより、対応していることを示していると考えられた。 4.合成飼料で無菌的に飼育した幼虫をタマネギに移したところ、餌の交換後6時間にわたってSOD活性の上昇が見られ、活性は2.5倍になった。その後、活性は一時減少したが、24時間後から再度上昇に転じ、48時間後にはSOD活性は4.5倍に達した。このような効果はタマネギのメタノール抽出物では全く観察されなかったことから、SOD活性上昇の原因は、幼虫の摂食に伴うタマネギ組織の崩壊によって生じた物質(未同定)であると考えられた。
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