研究課題
カンキツかいよう病菌のコスミドベクターpLAFR5を用いたゲノミックライブラリーを構築し、これより本菌のクラスターを形成するhrp領域とPseudomonas syringae pv. syringaeのhrpM領域と相同性を示すクローンを各々得ることが出来た。これらは、前にトランスポゾンタッギングによて分離した病原性欠損変異株の10株の内F8及びF4とF9が上記の各hrp領域に変異を起こしていることをサザンブロットハイブリダイゼーションによって明らかにした。これらの変異株とタバコ培養細胞との共存培養した際、活性酸素の生産による化学発光の上昇がみられなくなった。このことからも、これらの病原性欠損変異株が過敏感反応誘導能力も欠損していることを確認した。次に、それぞれのクローンの制限酵素切断断片地図を作成した後に、これらのクローンの挿入部にTnphoAを用いてアルカリフォースファターゼ遺伝子との融合体を15株得、これらの挿入位置と方向を決定した。これらの融合体の大腸菌内における誘導条件を検討したが、他のhrp遺伝子群で誘導された条件でも誘導は見られなかった。従って、カンキツかいよう病菌のhrp領域は、本菌が植物体内に侵入した時にのみ誘導されるものと考えられた。hrpMと相同性を示したクローンは、グルカン合成に異常をきたし、植物細胞に吸着能力を失っていることが判明した。これにより、かいよう病菌が宿主植物には病原性、非宿主植物には過敏感反応を誘導するためには、グルカンを介して植物細胞に吸着することが不可欠であることを示すことが出来た。また、上記病原性欠損変異株の内、F5とF7株がグラム陰性細菌の主要外膜タンパク質であるポーリン合成に異常をきたしていることを発見した。この結果は研究計画にはなかったものであるが、植物病原性細菌の病原性解明に重要な示唆を与えるものである。
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