研究概要 |
ホソヘリカメムシの体液と卵に存在するビリベルディン結合蛋白質(CP-1,CP-2,CP-3,CP-4)の発育・変態に伴う挙動変化についてリガンドとレセプターの両面から研究を行い以下の知見を得た。1.CP-1(α_6)とCP-4(β_6)を精製し、^<125>Iでラベルし、種々の発育段階の虫に注入する事により(1)5令末期にはCP-4がCP-1の7倍の速度で脂肪体に取り込まれる、(2)羽化直後の成虫では両者とも新生したクチクラに取り込まれる、(3)成虫期にはCP-1のみが卵巣に活発に取り込まれることを明かにした。以上から脂肪体と卵巣でのリガンド特異性の異なるCPレセプターの存在が示唆された。2.卵巣・脂肪体からの細胞膜画分の調製法が確立した。モジナイズで得た比較的大きめの膜断片をCa^<++>存在下で遠心により回収する方法が簡便で、結合実験にも用い易いことがわかった。3.リガンドブロット法については調製した膜画分をもちいて試みているが、バックグラウンドのバンドが多く、泳動の際に低温・非還元条件下で行ない、ゲルを8M尿素中で震とうし、ブロッティングはメタノール非存在下で短時間行なう等の改良により改善された結果が得られるようになった。3.リガンドのCPについてはα、βのcDNA、ゲノムDNAの全塩基配列とコードされるアミノ酸配列を決定した。両サブユニット間のアミノ酸レベルでの相同性は約70%であり、αは4カ所、βは3カ所のN-glycosilation siteをもち、うち3カ所は共通であった。また遺伝子DNAの配列解析により両遺伝子とも11のエクソンに分割されていることが明らかとなった。4.αとβの糖鎖についてビオチン化レクチンを用いて解析した。両者ともCon Aとは強く反応したが、MAMとSSAについてはCP-4が強く反応し、糖鎖末端でのシアル酸の存在が示唆された。それに起因するCP-4表面の陰電荷の存在がおそらくCP-4の卵巣レセプターへの結合阻害に関与していると思われる。
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