キュウリモザイクウイルス(CMV)Y株の外被タンパク質遺伝子を発現する形質転換タバコ植物(CP+)のCMV抵抗性に影響するいくつかの要因を明らかにした。1)CP+の抵抗性は高温下(30-32℃)で著しく低下した。また、高温条件はCP+における外被タンパク質遺伝子mRNAの蓄積量よりもその翻訳産物である外被タンパク質の蓄積量を大きく減少させた。このことから、CP+のウイルス抵抗性は発現する外被タンパク質mRNAよりもむしろ外被タンパク質によるものであることが明らかになった。2)CP+のウイルス抵抗性はサテライトRNA(Sat-RNA)をもつCMVよりもSat-RNAをもたないCMVに対してより強く作用した。しかし、CMV-Y株のCP遺伝子を発現するCP+はSat-RNAをもつP株やF株3よりもSat-RNAをもたないY株に対してより強い抵抗性を示す傾向が認められた。3)CP+が強い抵抗性を示すCMV-Y株とそれより弱い抵抗性を示すCMV-F株の間でRNA3を組み換えたpseudorecombinantに対するCP+の抵抗性を検定した結果、F株のRNA1とRNA2とY株のRNA3をもつpseudorecombinantに対するCP+の抵抗性はY株に対してよりも著しく減少し、一方、Y株のRNA1とRNA2とF株のRNA3をもつpseudorecombinantに対するCP+の抵抗性はF株に対してと同等か、むしろ減少する傾向が認められた。これらのことからY株とF株に対するCP+の抵抗性の違いは、CMV粒子を構成する外被タンパク質の違いによるものではなく、RNA1、RNA2とRNA3の相互作用によるCMVの性質の違いによるものであることが明らかになった。
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