研究概要 |
家蚕濃核病ウイルスには現在、伊那株(BmDNV-1)と山梨株(BmDNV-2)に代表される2種類のウイルスが存在し、これらは品種特異性などの点で著しく異なっている。本研究ではこれらのウイルスの違いを分子生物学的な基盤に於いて明らかにするとともに、濃核病発生予防のための基礎的情報を得る目的で以下の実験を行った。 BmDNV-1はすでにその遺伝子構造及び複製様式からパルボウイルスに属する事が判明している。ところが、BmDNV-2に於いてはゲノム末端にヘアピン構造は認められず複製様式に於いてパルボウイルスとは異なっている事が推定された。本ウイルスの分類上の位置づけを明瞭にするためにはウイルスDNAの遺伝情報に関して明らかにする必要がある。そこで2種類のゲノムDNA(VD1,VD2)の塩基配列の解析を行った。まず、VD2に関してその全塩基配列を決定した。VD2は約6000塩基からなりその塩基組成には片寄りがみられた。すなわち末端領域は非常にG-Crichでありそれ以外の領域は逆に非常にA-Trichであった。また、本配列には少なくとも2個の大きなオープン・リーディング・フレーム(ORF)が認められ、これらは別々のDNA鎖に存在した。これらのORFにコードされるタンパク質に関して解析を進めるためそれらに対するペプチド抗体を作成中である。VD1に於いてもVD2同様塩基配列の片寄りが認められた。現在、遺伝情報の解析中である。以上の結果は、BmDNV-2がこれまで知られているDNVとは全く異なるタイプのウイルスである事を示している。一方、BmDNV-1とBmDNV-2に於いて明かとなった塩基配列を基に合成したオリゴヌクレオチドを用いたPCR法の応用を検討したところ、極めてて高感度でそれぞれの塩基配列が検出可能であり、この方法の診断及び疫学への応用が可能であると考えられた。
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