平成4年度は、主に二つの実験を行なった。まず、超反復配列保有株のゲノム当りのRSα・RSβ配列のコピー数をハイブリダイゼーション時の放射能強度から推定した。新潟農業試験場から多数単離された超反復配列保有株はいずれもRSα配列がゲノム当り80〜200コピーであり、通常株のRSα配列の1〜12コピーと比較して異常の多いことが明らかとなった。しかし、新潟農試の超反復配列保有株のRSβ配列は20コピー前後で通常株の数倍にすぎなかった。一方、十勝農業試験場の圃場に生息していた超反復配列保有株では、RSα・RSβ配列ともに通常株の数倍のコピー数であった。以上の結果より、超反複配列保有株の反復配列のコピー数は圃場によって異なっており、超反復配列保有株の生成されやすい環境が存在すると考えられた。 次に、超反復配列保有株と正常株の共生状態の諸性質と単生状態の生育速度を比較検討した。両者は共生状態において同等の窒素固定活性(アセチレン還元活性)とヒドロゲナーゼ活性を示した。しかしながら、YM液体培地における対数期の増殖速度は超反復配列保有株において明らかに遅くなっていた。ちなみに同じ土壌の通常株の世代時間が4〜6時間であるのに対し、RSαのコピー数の多い新潟農試の超反復配列保有株の世代時間は5〜9時間となった。また、hup・nif遺伝子をプローブとしたハイブリダイゼーションにおいて超反復配列保有株のバンドは正常株のバンドとずれており、そのずれの程度も各々の超反復配列保有株によってことなる現象も観察された。これらの結果は、RSαなどの反復配列がゲノム上の単生の増殖に必要な遺伝子内やhup・nif遺伝子周辺に転移していることを示唆していると考えられた。
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