ダイズ根粒菌超反復配列保有株のゲノム当りのRSα・RSβ配列のコピー数をハイブリダイゼーション時の放射能強度から推定した。新潟農業試験場から多数単離された超反復配列保有株はいずれもRSα配列がゲノム当り80〜200コピーであり、通常株のRSα配列の1〜12コピーと比較して異常の多いことが明らかとなった。しかし、新潟農試の超反復配列保有株のRSβ配列は20コピー前後で通常株の数倍にすぎなかった。一方、十勝農業試験場の圃場に生息していた超反復配列保有株では、RSα・RSβ配列ともに通常株の数倍のコピー数であった。以上の結果より、超反復配列保有株の反復配列のコピー数は圃場によって異なっており、超反復配列保有株の生成されやすい環境が存在すると考えられた。 次に、超反復配列保有株と正常株の共生状態の諸性質と単生状態の生育速度を比較検討した。両者は共生状態において同等の根粒形成能・窒素固定活性・ヒドロゲナーゼ活性を示した。しかし、YM液体培地における対数期の増殖速度は超反復配列保有株において明らかに遅くなっていた。ちなみに同じ土壌の通常株の世代時間が4〜6時間であるのに対し、RSαのコピー数の極端に多い新潟農試の超反復配列保有株の世代時間は5〜9時間となった。パルスフィールド電気泳動によってダイズ根粒菌超反復配列保有株と通常株におけるRSα・RSβ配列の分布の検討を行ったところ、ゲノム上におけるRSαとRSβの分布域は、通常株で17%(RSα)、8%(RSβ)であったが、超反復配列保有株では74%(RSα)、42%(RSβ)となっていた。また、超反復配列保有株のゲノムサイズは通常株より大きい傾向が観察された。hup・nif遺伝子をプローブとしたハイブリダイゼーションにおいて超反復配列保有株のバンド数および位置は正常株と明らかに異なっていた。以上の結果より、超反復配列保有株ゲノムでは、RSα・RSβ配列の転移とそれに伴うゲノムの再構成が起きている可能性が強く示唆された。
|