研究概要 |
本学農場(多腐植質黒ボク土)に、堆厩肥連用(17〜62トン/ha)及び化学肥料P連用有無の処理区を設け、1982年秋より、コムギ、トウモロコシなどの栽培が続けられる中で、土壌中P化合物,経年変動が追究された。その結果の1989年までの知見は、1990年国際土壌科学会議で発表(裏面参照)したが、その後も再確認された。つまり堆厩肥投入の有無に拘らず、Al-Pの経年的増大(約2%1年)と他分画の有意な減少、Org-Pの堆厩肥投入区のみにおける減少が観察された。即ち、堆厩肥の継続的投入は土壌生物の活性強化を通じて、イノシトール-Pを主体とするOrg-Pの相対的減少を促進させることが明らかとなった。 さて、これら試験圃場から作土を採取して、無底の塩ビ管ポットに、作物根系と接触する土層(根域)と、しない土層(非根域)に分けて詰め、ポットを圃場に埋めこんでトウモロコシ(Zeamays)を裁培、裁培前後の両土層に含まれるP化合物の変化を追った。その結果、根域土層のAl-Pのみが顕著に減少し、その量はトウモロコシに吸収されたPの50〜80%に相当することが明らかとなった。つまり根域のAl-Pはトウモロコシの主たるP給源であることが示された。このことから、本黒ボク土で経年的に増加しつつあるAl-Pの少くとも一定部分は作物へのP供給源の主体を構成しており、堆厩肥投入のある限り化学肥料P投入ゼロであっても作物増収をはかりつづけることは可能であろうと推定された。 また、γ線殺菌した同土壌を10^<-4>aポットに詰め、VA菌根菌接種源として各生土10gあるいは、同圃場から分離培養したGlomusetunicatum(Ge)胞子100ケを種子下3cmに置き、トウモロコシの栽培前後における培地土壌P化合物の形態変化を追った。Geとの共生下では、栽植に伴なって根域土壌のAl-Pの減少とともに、Org-Pの減少もみられ、VA菌根形成下でのOrg-Pの可給性が推定された。
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