研究概要 |
土壌中におけるセルロース分解に伴う基質上の微生物フロラの遷移と分解に関与する酵素群の消長をin situ測定法を用い、土壌の培養条件として、殺菌剤Chlorotharonil(以下,TPN)処理と培養温度を組み合せた区を設けて検討した。 基質上の微生物フロラ、とくに糸状菌フロラは、殺菌剤を処理した常温(25℃)と低温(13℃)条件下では著しく異なることが明かとなり、これらの結果については、J.Pestiscide Sci.18,225-230,285-292(1993)に発表した。ついで、セルロース基質上からの遊離セルラーゼの回収方法とその解析方法について検討し、Cx-セルラーゼ(CMCase)については簡便な方法を確立した。これまで土壌セルラーゼの研究に本研究のようなアプローチはなく、土壌中における粗大有機物の分解に関する生態学的な解明に新知見をもたらすものと考えられる。 今回得られた具体的知見は、前述のJ.Pestiscide Sci.誌に発表した以外に次のとおりである。 殺菌剤を散布した土壌中に埋設したセルロース基質を一定期間毎に回収し、これから直接抽出される遊離セルラーゼ、とくにCx-セルラーゼ(CMCase)を電気泳動することによって、その消長とセルロース分解との関係および基質上の糸状菌フロラとの関係を解析した。CMCaseのアイソザイムパターンは培養温度の高低および殺菌剤散布の有無によって異なり、とくに殺菌剤を施用していない対照区であっても25℃と13℃培養におけるアイソザイムパターンの違いは顕著であった。また、培養期間に伴うCMCaseの消長も認められた。したがって、環境条件が異なることによって、セルロース分解に関与する微生物フロラが異なること、また、セルロース分解の進行に伴ってそのフロラが遷移していることがCMCaseの面からも確認された。
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