ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PADと略記)は、Arg残基をCit残基に変換する新しい蛋白質修飾酵素である。生体内にはArg残基を活性中心とする酵素など生理活性蛋白質も多く、本酵素の生体制御への関与が推定される。本研究は最近明らかにした分子量および基質特異性の異なる3つの型の酵素の成因と組織特異的発現の解明を目的として遺伝子構造を中心に研究を進めた。 1.本酵素ゲノムDNAの構造解析:マウスDNAライブラリーを用い未知部位のCDNA1〜686及び1581〜1795baseのそれぞれの両側の塩基配列に基づき、プライマーを合成し、PCR法により構造未知部分のDNAを合成増幅させた。得られた1Kbase及び3Kbaseのクローンの配列を解析し、従来既知の分を合わせてcDNAの約90%に相当する部分のエキソンの配列を解明した。cDNAの翻訳開始Met部位を1とした場合の〔エキソン〕ー(イントロン)の配列塩基対数は、(1)〔110〕(イントロン未解決)(2)〔570エキソン数未解決〕(5.2K)(3)〔179〕(600)(4)〔103〕(420)(5)〔113〕(1.4K)(6)〔108〕(1.8K)(7)〔152〕(1.2K)(8)〔145〕(830)(9)〔94〕(2.1K)(10)〔86〕(2.5K)(10)〔129〕(350)(12)〔2888〕(21.6K以上)、○内はエキソンの順番を示した。エキソンとイントロンの連結部位はすべてGT-AG則に合致していた。またプロモーター領域にはGC-BOXが4個所、CAT-BOXが1個所存在した。 2.PADIII型酵素の精製と構造解析:成熟マウスの皮の抽出液よりPADIII型の精製を試み、難渋を強いられたが、微少量の精製ができた。アミノ酸分析値はII型に類似していることが判った。微量のため、一次構造解析にまで至らなかった。
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