抗原提示細胞においてタンパク質抗原がクラスII分子によって提示される場合、通常、抗原はプロセシングを受けてから提示される。本研究では、T細胞抗原決定基のペプチド領域のプロテオリシスの受けやすさを調べた。ペプチドとして、鶏卵白リゾチーム由来の46〜61残基と85〜96残基に相当するペプチド(p46-61とp85-96)を、また酵素としては、抗原のプロセシングへの関与も推定されているカテプシンを用意した。その結果、カテプシンBはp46-61の57-58と59-60の間の2箇所を切断することが判明した。p46-61はH-2^aまたはH-2^Kのマウスにおいてdominantな抗原決定基52-61/A^Kを含むことが知られている。カテプシンBが切断できた部位はT細胞抗原決定基として重要な部位であるので、この領域はプロテアーゼによって切断されるより早くI-A^K分子に結合し、プロテオリシスを受けないと考えられる。一方、p85-96はcrypticな抗原決定基87-96/E^Kを含み、これはリゾチーム分子からは提示されない。p85-96は、カテプシンBとDのどちらによっても切断されなかった。この部分はMHC分子に結合するより前にプロテオリシスを受けることが予想されるが、それに関与する酵素はカテプシン以外であり、以前からの知見と合わせて塩基性カルボキシペプチターゼの関与があると推定した。以上のことをさらに確かめるために、各種プロテイナーゼ遺伝子のアンチセンスDNAを合成した。また、抗原提示細胞によって実際に提示されているペプチドを同定する実験を開始した。
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