研究概要 |
抗原ペプチドとMHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラスII分子との結合性を解析する系を開発した.クラスII分子として,C57BL/6(B6)マウスの脾臓からA^b分子を精製した.ペプチドとして,ウシβ-ラクトグロブリンの119-133残基を合成した.このペプチドは,すでにB6マウスにおいて優勢なT細胞抗原決定基を含むことが示されている.このペプチドをビオチン化し,試料ペプチドによる標識ペプチドのA^b分子への結合の阻害を酵素標識免疫測定法で測定した.その結果,この方法によって感度よく結合能を測定できることが判明した.そこでさらにアナログペプチドを用意して,アレルゲンのアグレトープを解析する予定である。 またマウスを用いて,抗原提示機構を解析した.B10.A(H-2^a)マウスを鶏卵白リゾチーム(HEL)で免疫した場合87-96特異的T細胞の応答は誘起されないが,ペプチド(p)85-96で免疫すると誘起され,T細胞抗原決定基87-96/E^kはクリプティック(潜在的)であった.ところがin vitroにおいてp85-96特異的T細胞はp85-96に応答するのみならず,HELにも応答した,HELからの87-96の提示されやすさは抗原提示細胞の種類によって異なっていた.したがって,体内でT細胞を初期に活性化する抗原提示細胞は87-96を提示できないことが示唆されたクリプティックな抗原決定基の提示は抗原提示細胞の種類によって異なっていた.これは,自己免疫応答や食品アレルギーの原因を解明する上で重要である.
|