研究概要 |
マウスを用いて,食品抗原タンパク質の提示機構を解析した.B10.A(H-2^a)マウスを鶏卵白リゾチーム(HEL)で免疫した場合,87-96特異的T細胞の応答は誘起されないが,ペプチド(p)85-96で免疫すると誘起され,T細胞抗原決定基87-96/E^kはクリプティック(潜在的)であった.この潜在的な抗原決定基に対する応答の解析は,自己免疫疾患の原因を調べるうえで重要であることが知られており,また食品アレルギーの原因究明の上でも重要であると予想できる.そこでこの抗原決定基の抗原提示について,より詳細に解析した.in vitroにおいては,p85-96特異的T細胞はp85-96に応答するのみならず,HELにも応答した.HELを異なる抗原提示細胞(APC)に与えた場合,マクロファージは87-96/E^kを比較的提示しやすいのに対し,B細胞は87-96/E^kを提示しにくく優勢な抗原決定基(46-61/A^kや20-35/A^kなど)を提示しやすいことが判明した.したがって,1)APCによって提示する抗原決定基は異なること,2)in vivoにおいて87-96/E^kに応答するT細胞が活性化されない理由は,マウス体内でT細胞を初期に活性化するAPCは,in vitroの実験で観察された応答に関与するAPCとは異なり,87-96/E^kを提示できないためであることが示唆された.また,インターフェロンγは,B細胞によるHELからの87-96/E^kの抗原提示を増強し,マクロファージによる提示には影響しなかった.しかしこの影響の与え方は,抗原決定基によって異なっていた.したがって,炎症反応などで分泌されるサイトカインは,抗原決定基の提示されやすさに影響を与え,その影響は抗原決定基ごとに,またAPCごとに異なっていた.抗原決定基の提示のされやすさは免疫寛容に深く関係するので,以上のことは,自己免疫応答や食品アレルギーの原因を解明する上で重要である.
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