平成5年度においては、平成4年度の成果に基づいて、主にin vivoでのn-6及びn-3系列脂肪酸の代謝に及ぼす胡麻セサミンとうこんクルクミンの影響について検討を加えた。実験は与える油脂の種類を2つに分けて行った。即ち、C_<18:3>のγ-リノレン酸を約25%含むバイオリノレン酸油(微生物の醗酵で生産したもの)およびサフラワー油とえごま油を混合してn-3/n-6比を約3にし、n-3系列のリノレン酸に富む油脂を与えた時の両香辛料成分の効果を検討した。脂肪の投与レベルは5%とし、香辛料成分は0.5%与えた。 その結果、バイオリノレン酸を与えた時には、臓器により若干の違いは認められるものの、全体を通してセサミンの効果がクルクミンの効果に比べて大きく認められ、クルクミンは吸収率が低いことが推定された。セサミンは肝臓を始めとする多くの臓器でγ-リノレン酸のアラキドン酸(C_<20:4>)への中間代謝物であるジホモ-γ-リノレン酸(C_<20:3>)の量を増大させ、結果としてn-6系列のC_<20:3>/C_<20:4>比を増大させた。このことはプロスタグランジン(PG)やロイコトリエン(LT)などの生理活性物質産生の原料であるこれらの脂肪酸の組成を変えることで、1シリーズと2シリーズの比率を変え、その結果PGとLTの活性を調節することにつながることになる。 また、n-3/n-6比を3程度にした油脂を与えた時にはn-6系列の脂肪酸の代謝が阻害されていることが、各臓器の脂肪酸組成や肝臓のリン脂質の脂肪酸構成から示唆された。 以上述べた結果は食事由来の香辛料が色々な意味で、体内での代謝の調節に関与していることを示すものであり、単に細胞レベルのみならず、in vivoの系でも証明されたことは注目に値するといえよう。
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