種々のビタミンと特異的に結合するタンパク質の存在が知られているが、遊離のニコチン酸(NiA)やニコチンアミド(NAm)と結合するタンパク質の存在は知られていなかった。そこで、種々の検討を加えた結果、NAmと特異的に結合するタンパク質の存在を、つい最近になって、はじめて明らかにした次第である。そこで、本研究では、ブタ肝臓およびラット各臓器中のニコチンアミド結合タンパク質(NAm-BP)の諸性質やナイアシン関連化合物との関係などを検討し、その生化学的機能の解明を目的としたものである。その結果として、以下のようなことが判明した。NAm欠乏食、コントロール食、NAm過剰食を、それぞれラットに2週間自由摂取で与え、各臓器中のNAm-BP活性を測定したところ、コントロールに比べ、NAm欠乏食で飼育したラットでは、肝臓、腎臓など、ほとんどの臓器でその活性が増大するという結果が得られ、生体内のNAm量の増減に応じて、NAm-BPのNAm結合能も変化することが示唆された。また、ブタ肝臓抽出液中にNAm-BPの補因子を見い出し、その分子量は1万以下で、熱に対しては安定であるが、酸やアルカリには不安定であり、電荷は中性であることが確認された。ブタおよびラットの肝臓中のNAm-BPからのNAmの遊離条件を検討したところ、過剰のNAmを加えることにより、NAmの交換反応が起こることが確かめられた。また、MNAや2-Pyにより、NAm-BPへのNAmの結合量が大幅に減少した。この両化合物は、尿中に排泄されるNAmの最終代謝産物であり、これらの化合物の存在下でNAm-BPからNAmが遊離することから、生体内のNAm量の減少に応じて、NAm-BPからNAmが供給されるというメカニズムが存在する可能性が示唆された。ビタミン定量への応用については、時間の関係で今後の課題とせざるを得ない。
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