研究概要 |
霞ヶ浦において発生し、採集された「アオコ」の優占種ラン藻(Cyanobacteria),Microcystis aeruginosa f.aeruginosa Kutzing(I)の生理・生態を分子生物学的に研究するために、今回は先ず(I)よりそのプラスミドDNAを単離しその塩基配列決定と機能解析を行った。 1。上記M.aeruginosa(I)より2種のプラスミドを抽出単離することが出来た。小プラスミド(pMA1)は2.3kb,大プラスミド(pMA2)は5kbの大きさであり、両者の制限パターンはそれぞれに異なっていた。両者の細胞内でコピー数の比率はpMA1:pMA2=6:1と評価出来た。 2。pMA1は興味あることに、Synechocystis PCC 6803株の有する小プラスミドpUS1-3とhybridizeし、両者が高い相同性を持つことが示された。 3。pMA1をM-13にクローニングし、dideoxy法を駆使してその全ヌクレオチド配列を決定できた。pMA1は2287bpからなり、塩基の存在比率はA:613,C:497,G:444,T:733、GC contentは41.1%であった(DDBJ Accession No.D10841)。 4。この配列中には9個のORFが見い出され、そのうちの1個は253個のアミノ酸よりなり、例えばBacillus coagulansの有するプラスミドpBC1のreplication proteinと53%という高い相同性を示した。こま傾向は、Bacillus属のみならずLactobacillus属Staphyrococcus属のプラスミドとの間に於いても認められた。 5。pMA1のori領域、dna box等に於いても幅広く且つ高い相同性が認められた。とりわけori領域に於いて、ローリングサークル複製機構のシグナルと高い相同性が認められたことは興味ある発見である。 6。現在pMA2の配列決定を進めており、pMA1との相関性、M.aeruginosaの異常発生現象との関係等について研究を進めている。
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