研究概要 |
本年度においては下記の2点について成果を得た。 1、大豆主要アレルゲン(Gly m I)のタンパク質化学的性質とエピトープに関する情報 Gly m I(GMIと略,34kDa,ペプチド配列 No.1-257)を還元条件下でBrCNにて処理し、Met部位でのペプチド結合の切断を試みた。生成物のSDS-PAGEおよびニトロセルロース膜転写後のN末端アミノ酸分析の結果からペプチドA(16.5kDa、No.4-127),ペプチドB(14.5kDa、No.128-226)およびNo.1-3のトリペプチドの切断された約30kDaのペプチドMが検出された。ペプチドMetはNo.128,226のMetがMet-SOに酸化された結果BrCN切断を受けなかったものと考えられる。一方、キモトリプシンによる消化を行ってペプチドC(10.5kDa,No.163-257)を得た。これらのペプチドの患者血清によるイムノブロットの結果より、人IgE抗体のGMI上の主要な認識部位はNo.163-226のペプチド上に存在することを明らかにした。 2、還元カルボキシメチル化したGMIを免疫したBALB/c系マウス脾臓細胞とミエローマ細胞より2種の性質の異なるモノクローナル抗体、F5(IgG)およびH6(IgM)、を作製することに成功した。この2種の抗体を用いてSandwich ELISA法によるGMIの選択的微量定量法を開発した。種々の食品素材に存在するGMIを5ng-500ng/mlの濃度で効率良く定量することが可能である。また、HRP酵素標識両抗体を用いるイムノブロット法により直接的に食品中のアレルゲンの分布・存在を観察することが可能である。これによってSPI,常法により分画した7S,2S,Whey画分にはGMIの存在が確認されたが、11S-グロブリン画分には全く観察されなかった。一方、殆どの大豆食品にGMIが分布することが確認されたが、納豆においてはモノクローナル抗体の認識し得るペプチドの存在は確認されなかった。
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