研究概要 |
大豆に対して感受性のあるアトピー性皮膚炎患者の血清をプローブとしてスクリーニングを行い、患者血清中のIgE抗体が認織するタンパク質成分を約15種類検出した。これらのタンパク質について詳細に検討を行って、それらの大豆タンパク質画分への帰属を行った。大部分のアレルゲンは7S-グロブリン画分に分画される成分である。それぞれの成分に得意的なIgE抗体保有患者の検出頻度をアレルゲン性の強さの基準とすると、20%以上の成分は約5種類程である。このうち最も頻度の高い(65%)成分を主要アレルゲンとしてGly m Bd 30K(GM30)と命名した。GM30を粗7S-グロブリン画分より各種クロマトグラフィーを駆使して単離・精製した。本アレルゲンは等電点pI4.5付近にあり、SDS,mercapto-ethanolの存在下で分子量32,000を示した。N-末端アミノ酸配列は大豆34-kDa oil-body-associated protein(P34)のそれと完全に一致した。その他、タンパク化学的性質、抗体に対する挙動からGM30をP34と同定した。このタンパク質のアミノ酸配列はパパインに代表されるチオールプロテイナーゼ群に属するタンパク質であり、かつ、最も強いアレルゲンとして知られている、イエダニのDerp Iアレルゲンとも30%以上の相同性を示す事が明らかとなった。また、GM30を用いてマウスよりF5,H6の2種の性質の異なるモノクローナル抗体を作成した。これを用いてSandwich ELISAを利用した定量法を確立すると共に、インムノブロット法によりアレルゲンの大豆を利用した各種食品中における分布を明らかにした。さらに、タンパク分解酵素による分解フラグメントの患者血清によるイムノブロットを利用してエピトープ構造の解析を行っているが、エピトープは本アレルゲンポリペプチドの後半部分に存在することを明らかにしている。以上の成果は、今後アレルゲン除去大豆食品の開発の研究において大いに活用されるものと考える。
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