ドリコールは種々の組織で加齢と共に増大する。コレステロール生合成経路と同じ経路で合成されるので、コレステロールと同様に種々の食餌因子によって影響を受ける事が考えられる。 本研究ではドリコールの肝臓、腎臓、脳、脾臓、脂肪組織への蓄積に対して、大豆タンパク質やカゼインがどのような影響を与えるかを調べた。 A.肝臓について:カゼインタンパク質食群では、加齢とともにコレステロールおよびドリコールが著しく増大したが、大豆タンパク質食群では肝臓へのコレステロールの蓄積が抑制されるのと同様にドリコールの蓄積をも抑制された。コレステロールエステルの割合が高い時は、ドリコールエステルの割合も高かった。このことからコレステロールおよびドリコールのエステル化は呼応しているものと推定された。 B.肝臓について:加齢によるコレステロールの蓄積はなかったが、ドリコールの蓄積は観察された。やはり、大豆タンパク質食群ではカゼイン食群よりドリコール含量は低かった。 C.脂肪組織について:加齢とともにコレステロール、ドリコール共に増加したが、タンパク質の種類によって変化はなかった。ただ、一般にはドリコールの前駆体ポリプレノールは肝臓、腎臓等の臓器では数パーセント以下であるのに脂肪組織では30-40%と高い割合で存在していた。ドリコール生合成系の研究に格好の材料となることを示している。 以上の結果は平成5年8月のドリコールに関する国際学会(於:ポーランド)で発表する予定である。
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