研究課題
1.多彩な生理作用を示すビタミンA(A)のうちレチノイン酸は、リガンド依存性転写因子である核内レチノイド受容体(レチノイン酸受容体:RARレチノイドX受容体:RXR)を介した遺伝子発現制御を通しその生理作用の一部を発現する。更にRXRは甲状腺ホルモン(T)1ビタミンD(D)受容体の補因子としてこれら3つの情報伝達系で重要な役割を果すと考えられている。従って、RAR/RXR遺伝子発現調節機構を解析することは、A、D,Tの情報伝達機構を明らかにするうえで重要である。そこでラットを用いRAR/RXR遺伝子発現調節機構を解析した。その結果、RARα遺伝子発現は胚で、RARγは成熟個体でのみAにより誘導された。またRARβ遺伝子発現は常にAにより誘導された。即ち、AによるRAR遺伝子発現制御には、発達段階の制御が存在した。また、TによりRXRβ遺伝子発現は正、RXRγ遺伝子発現は負に制御された。TはRXRβ遺伝子発現を転写レベルで制御し、RXRγ遺伝子発現を転写レベルと転写以後の両段階で制御すると考えられた。2.Aの貯蔵器官である肝臓からり標的器官への移行は血中を介して行われるが、この際レチノールは特異的結合蛋白質(RBP)及び甲状腺ホルモン結合蛋白質(TTR)と複合体を形成している。生体内での多彩なAの生理作用の一部は厳密上調節された血中A濃度調節機構に依存しているものと考えられる。しかし血中RBP濃度は極めて低い。そこでRBPの大腸菌による大量発現系の確立を試みた。精製過程を単純化する目的でマルトース結合蛋白質(MBP)との融合蛋白質を発現するベクターを構築し生成を試みたが、RBPを単一蛋白質として得ることはできなかった。融合蛋白質を用いた実験結果よりレチノールとは弱い結合がみられたがTTRとの結合は見られなかった。またレチノール取り込みにおける挙動は、血清より精製してきたRBPと酷似していた。
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