研究概要 |
Klebsiella pneumoniaeのプルラナーゼについては、alpha-,beta-,gamma-シクロデキストリン(以下(CDと略す)との結合において、beta-CDが格段に強い結合を示す原因は、酵素の活性部位近傍にあるアミノ酸残基の側鎖が、ちょうどbeta-CDの環内に入り込むことができるためではないかと想像される。もしそうであるならば、beta-CDにトシル基を導入した誘導体は、トシル基が環内に入り込むため、酵素のアミノ酸残基との結合を妨害する結果として、酵素との結合が弱くなり、阻害物質定数K_iが大きくなるであろうと予想される。トシル基が環内にうまく適合できないalpha-やgamma-CDでは、このようなことは起らないであろう。したがってalpha-,beta-,gamma-の3種のCDにトシル基を導入した誘導体を合成し、各々につき、トシル基のない場合と阻害の強さを比較した。その結果、beta-CDのみがトシル基の導入によりK_iが数倍に増大し、alpha-,gamma-CDでは逆にK_iが若干小さくなる傾向が認められた。この結果は酵素のアミノ酸残基の側鎖がbeta-CDの環内に貫入することにより、結合を強くしていることを示唆した。 一方、Klebsiella aerogenesのプルラナーゼをE.coliによって発現させた菌株をプルラン添加の下で培養し、これから単離・精製したプルラナーゼは、K.pneumoniaeの酵素と比べて、かなり小さいミカエリス定数Kmをもち、またモル活性も大きく、かつalpha-,beta-,gamma-CDによる阻害物質定数もかなり小さいことがわかった。今後これら2種のプルラナーゼを比較しつヽ研究を進めたいと考えている。
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