有毒成分を含む藍藻がSynechococcus sp.であることが判明した。本藍藻の有毒成分は水およびアルコールの可溶性であること、ODSを用いた逆層クロマトグラフィーでは分離が困難であること、不安定で、酸化されやすいこと等が明かとなった。以上のことから、有毒成分の抽出、単離方法を以下のように確立した。 凍結乾燥試料10gに100mlの蒸留水を加えて、超音波処理した後、1Lのクロロホルム/メタノール(3/7)混合液を用いて有毒成分を抽出した。抽出液をDEAEカラムにかけると、有毒成分はカラムに吸着される。これを酢酸アンモニウム0.1M、0.2M、0.5Mを含むクロロホルム/メタノール/水(3/7/1、v/v/v)で溶出すると、有毒成分は0.2M酢酸アンモニウムの画分に溶出する。これを濃縮乾固し、クロロホルムにけん濁し、シリカゲルカラムにかける。有毒成分はクロロホルム/メタノール(7/3)の画分に溶出する。混在する不純物は薄層クロマトで除く。 NMRスペクトルから、有毒成分は1モルのスルホン酸を含む糖、1モルのグリセリン、1モルの脂肪酸および未同定成分の存在が示唆された。類似の既知物質であるスルホキノボシルジアシルグリセロールと比較すると、薄層クロマトによるRf値は有毒成分の方が若干小さい。HCIおよびNaOHによる加水分解によって、グリセリン、糖スルホン酸、脂肪酸と脂肪酸よりRf値が小さい未同定成分が遊離する。NMRおよびIRスペクトルから、未同定成分には水酸基、カルボキシル基が存在せず、末端メチル基、CH2、極性基の隣のαおよびβ炭素にプロトンが存在する。また、水溶液の加熱によって、硫化水素が発生する。有毒成分の構造については以上の結果を得ている。 この有毒成分はHL-60培養細胞に対して150μg/mlの濃度でその増殖を50%抑制する。また、コイ科のアカヒレ(Tanichtys albonudes)に対する半数致死濃度は約20ppmであった。
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