多面形質変異であるsin(flaD1)変異は、オートリシン(cwlB)オペロンの発現を顕著に抑圧した。この作用がsin(flaD1)遺伝子のcwlBに対する直接作用であるかどうかを検討する為、Sin(FlaD)蛋白をヘパリソ-アガロースカラム、TSKゲルG3000SWXLのHPLCで精製し、cwlB遺伝子とのゲルシフト法による結合実験を行ったところ、結合が知られているaprEのコントロールではゲルシフトが認められたのに対し、cwlBでは認められなかった。本結果はsin(flaD1)変異がcwlBオペロンを直接に制御していないことを示唆している。一方、分解酵素の生産、細胞の繊維状化、運動性の低下、コンピテンスの欠損等に影響を与える変異としてdegS(Hy)、deg〓(Hy)が知られている。これらの多面形質変異のcwlBオペロンに対する作用を、cwlBオペロンの転写開始点、転写量から解析したところ、それらの変異ではσ^Aで転写されるPaプロモーターからの転写には影響しないのに対し、σ^Dで転写されるPdプロモーターからの転写は完全に抑圧された。この効果もまたsigD遺伝子の発現調節を介して制御されているかどうかを検討するため、sigD-lacZ融合遺伝子をdeg〓32(Hy)、deg〓146、△deg〓株に導入し、β-ガラクトシダーゼ活性を測定した。その結果deg〓32(Hy)株ではβ-ガラクトシダーゼ活性がまったく認められず、それゆえsigD発現を通じてcwlBオペロンを調節していることが解った。さらに本実験からsigD遺伝子の調節は、リン酸化Deg〓蛋白により行なわれていることを示唆した。
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