現在までに、糸状菌セルラーゼを用いた利用例については、多数の報告があるが、常温で中性付近の反応であるため好結果は得られていない。我々は、自然界から分離した好熱嫌気性細菌のDNAをクローン化して、10数種のセルラーゼ・キシラナーゼを得ている。 本研究では、それらの中から世界的に最高の耐熱性を有するキシラナーゼ(100℃、10分安定)と、自然界から新らたに分離した耐酸性キシラナーゼ生産菌(pH1.0で生育)の酵素とを用いて、その生産性及び酵素化学的性質を明らかにするとともに、種々の条件下で酵素を作用させ、リグノセルロース資源の効果的な利用面についての展開を計画した。その結果、以下の2項目を明らかにした。 1.高度耐熱性・耐アルカリ性キシラナーゼの生産ーーープラスミドpMF-31を有する大腸菌を大量培養し、キシラナーゼを精製純化した結果、発現した酵素は成熟酵素と、これよりもN末から12〜20アミ酸少ない酵素が2種類生産されることを発見した。この低分子化した酵素は耐熱性を増すことが判った。酵素反応生産物については3種ともに殆んど変化が認められず、また、アルカリ性でのパルプの脱リグニン作用は強くなかった。 2.耐酸性キシラナーゼの生産、精製、性質ーーーpH1.0で生育するPenicillium SP.40を分離し、キシラナーゼの生産性を高めるには、ペプトン・キシラン存在下で著量の酵素生産条件を設定することが必要であることを明らかにした。また、パルプを強酸性下で酵素処理することにより、脱リグニンに効果的であることが判った。別に、新らたに、菌体に結合したキシロシダーゼが強酸性で作用することを発見し、その酵素化学的な性質について検討中である。
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