耐酸性、耐熱耐アルカリ性の2種のキシラナーゼを生産させることを検討し、その酵素化学的な性質を調べるとともに、パルプ処理の際の添加効果を検討した。その結果、次のことが明らかとなった。 1.耐酸性キシラナーゼは、当研究室で分離したpH1.0で生育する青かびにより生産させた。その生産条件を種々検討した結果、pH2.0の強酸性下で培養し、誘導物質を添加することにより、酵素を生産させることが可能となった。 生産された酸性キシラナーゼはpH2.0付近で安定であり、また、作用至適pHも強酸性であった。液体培養又は固体培養により生産された粗酵素液はセルラーゼを混入していないので、そのまゝパルプ処理に使用することが可能であった。 2.得られた粗酵素を用いて、強酸性下でパルプ処理を行うと、塩素との組み合せによって漂白(脱リグニン)が促進され、塩素の使用量を減少させることが可能となった。 3.当研究室で分離した好熱嫌気性細菌のキシラナーゼ遺伝子を大腸菌に組み込み、著量の酵素を生産させることに成功した。この遺伝子操作によって得られたキシラナーゼは、微弱ではあるがセルラーゼ活性も示した。非常に耐熱性であり、また、アルカリ側でも安定であった。この性質を利用して、高温、高アルカリ性の条件下でパルプ処理を行った結果、耐酸性キシラナーゼに較べて効果が劣ることが判った。
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