研究概要 |
(1)土壌より分離した糸状菌Mortierella alpina IS-4をグルコースを主炭素源とする培地で培養すると,菌体中に著量のアラキドン酸含有油脂を蓄積することを見いだした。本菌をテスト菌としてアラキドン酸含有油脂の蓄積量増大に関する培養条件の検討を行い,炭素源としてグルコースと共にオリーブ油などのオレイン酸含有油脂を併用すると,菌体油脂中の不飽和脂肪酸の割合が上昇すること,特にこの傾向はアラキドン酸の生成において著しかった。また,培養時間を長くするとアラキドン酸含量が上昇し,他の不飽和脂肪酸含量が低下することも判明した。最適条件下でのアラキドン酸生産量は約5g/lに達した。 (2)本菌のアラキドン酸生合成経路の解明を行った。その結果,本菌ではグルコースから生成したステアリン酸が不飽和化と鎖長延長をくり返してアラキドン酸へ至ることを生合成経路の各中間体を単離することにより明らかにした。 (3)アラキドン酸生合成に関与する△5不飽和酵素反応について検討を加え,本反応の特異的阻害剤が天然物中に存在することをみとめた。ゴマ種子,ウコンの抽出物から阻害剤の単離を試みた。 (4)上記のゴマ種子抽出物またはウコン抽出物を本菌の培養液中の共存させて培養を行うと,△5不飽和化反応が抑制され,アラキドン酸の前駆体であるジホモ-γ-リノレン酸が蓄積することを認めた。
|