研究概要 |
エノキタケの2核菌糸における(1)最適温度特性発現,および(2)白色きのこの形成の2課題について,ヘテロカリオン2核菌糸細胞における遺伝子発現のルールを解明し,きのこの新品種育種に活用することを目的として研究を進め,以下の成果を得た. 1)エノキタケの1核菌糸株の温度特性は,特にA因子と強い連鎖が推測され,A2を有する株がA1因子株より格段に高温性を示した.2核菌糸の温度特性は,自殖および他殖交配とも菌株間で大きな正規分布特性の変異を示した.交配における2核高温株の出現頻度は,全交配株総数のほぼ半数(51%)であった.また,高温株の作出は1核親株の両者を高温株とする場合にもっとも高頻度であった.この場合,A1B1+A2B2の核型構成の交雑株で高い出現頻度(82〜83%)を得た. 2)エノキタケ白色品種の子実体白色化の機構は,白色品種に在来種より強い細胞内還元反応系としてのSODとPOの比活性のバランス,即ち,PO/SOD活性比で高いものが白色,低いものが着色を示すと推測された.交配で白色株となるものの親株1核菌糸はいずれか一方が50U/mg以上の高いSOD活性を示し,かつ白色交配株はほぼ例外なく親株と同等以上の活性発現が見られ,1核菌糸株に白色形質の遺伝特性が存在することが確認された.一方,POはアイソザイム構成であり,親株の1核菌糸の活性と交配株における発現に,白色および着色交配株とも明確な相関は見いだせなかった. 以上の育種技術開発で,現行品種より高温性で白色子実体を形成する品種の育成が可能となった.
|