研究概要 |
1. NPS1の細胞周期における作用点を明らかにするため、NPS1をガラクトース培地中でのみ発現する条件致死株を用い、遺伝子の発現を停止させた時の細胞のDNA含量をフローサイトメーターで定量した。この結果細胞はG2/M期のDNAを持って増殖を停止すること、また、NPS1の発現を停止させた状態で3世代時間以上培養を続けると一部の細胞でDNAの再複製が起こることが明らかになり、NPS1は細胞周期のG2期においてDNAの再複製の制御に関わっている可能性が示唆された。 2. NPS1の機能領域を明らかにするため、N末端側より約300アミノ酸づつを欠失させた4種の変異遺伝子を作製し,NPS1欠損株の致死性を抑圧するかどうかを調べた。この結果いずれの遺伝子も抑圧活性を示さず本遺伝子の全領域が活性発現に深く関わっていることを明らかにできた。また、この変異遺伝子の産物の細胞内局在部位の解析から本蛋白のC末端近傍が核への局在化に必要である事が明らかになった。NPS1の配列中にはSer/Thrキナーゼに保存されるコンセンサス配列の一部が存在する。この内キナーゼ活性の発現に必須なLys残基をGluに置換した変異遺伝子を作製し活性を調べたがこの遺伝子はNPS1破壊による細胞の致死性を回復させなかったことからこのLys残基はNPS1蛋白の機能に必須である事が明らかになった。 3. NPS1遺伝子が作用する周辺で働いている遺伝子を検出するため、1)NPS1の高発現に依存して生育の抑制が起こる変異株の取得、2)NPS1の欠損による致死性を多コピーで抑圧する遺伝子の検索を試みた。1)については2株の候補株を得、解析の結果これらは同一の相補性グループに属する劣性の単一変異であることを明らかにした。現在これらの株の形質の詳細、ならびに遺伝子のクローニングの準備を進めている。2)については現在取得された遺伝子を分類、解析中である。
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