研究概要 |
γポリグルタミン酸(γ-PGA)はグルタミン酸のみから構成されるホモポリマーで、微生物の細胞壁成分あるいはカプセル成分として存在しており、特に、納豆の粘性の主体としても知られている。しかしながら、納豆菌をはじめとする微生物により産生されるγ-PGAに関してはその高分子化学的諸性質については不明な点が多く、その生合成系に興味が持たれるが、関与する酵素系を含め、まだ明らかにされていない。本研究では、微生物の産生する共重合バイオポリマーともいえるγ-PGA生合成機構を遺伝子レベルで究明するとともにその機能進化に関して解明を目指し以下のような成果を得た。 (1)納豆菌プラスミドpUH1由来のγ-GGT遺伝子をコードした1.7k Taq I断片をプローブとし、γ-PGA生産菌であるBacillus licheniformis ATCC9945A株の染色体DNAバンクの中からポジティブクローンを2つのクローンを検出し、サブクローニングを行った。 (2)納豆菌プラスミド上にコードされるγ-GGT遺伝子をクローン化した(Appl.Microbiol.Biotech.,37,211(1992))。得られた形質転換株のγ-GGT活性は宿主菌の酵素活性の数倍に増加していたが、納豆菌に比べ10分の1以下にすぎなかった(投稿準備中)。 (3)枯草菌IFO3022株由来小型プラスミドpLS11(分子サイズ8.6kb)の複製開始領域の構造解析を行い、納豆菌を含む枯草菌、Staphylococcus、Lactobacillusなどの各種グラム陽性細菌で複製開始蛋白質の相同性が極めて高いことを明らかにするとともに納豆菌プラスミドのDNA複製機構を推定した(Biosci.Biotech.Biochem.,56,223(1992))。 (4)中国産「淡トウシ」由来γ-PGA生産菌を新たに単離し、その保持するプラスミドの検索及び機能を明らかにし(J.Gen.Appl.Microbiol.,39,印刷中(1993))、さらにγ-GGT遺伝子の塩基配列を決定し、併せてその複製開始領域の構造解析を行った(投稿準備中)。
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