ビフェニル(BP)資化菌は環境中に広く分布している。今回新たに分離した16株を加え、計32株についてBP代謝bph遺伝子の相同性、BP環開裂酵素の免疫学的性質を調べた。32株は全てBPを酸化し、フェニルカテコールを経て安息香酸へ分解した。その多くはグラム陰性菌でPseudomonas属、20株、Achromobacter属、2株、Alcaligenes属、2株、Moraxella属、1株、未同定株、6株、及びグラム陽性Arthrobacter属1株であった。先にクローン化したP.pseudoalcaligenesKF707株のbphABCD遺伝子をDNAプローブとして、各BP菌のゲノムDNAを制限酵素処理しサザン解析を行った。その結果、KF707bphオペロンと同一か、きわめて類似したbph遺伝子を有する9株が認められた。(第1グループ)。KF707bphと高い相同性を示すが、制限酵素パターンの異なる5株は、第2グループ、KF707bphと60-70%の相同性を有し、弱く交雑する6株は第3グループとして分類した。残りの12株は相同性が低く、第4グループとしたが、この中にはグラム陽性Arthrobacter sp.M5株や米国で分離したP.paucimobilis Q1株も含まれる。次に、KF707株の環開裂酸素添加酵素の抗体を用いて上記32株の酵素について免疫沈降反応を行った。第1グループはKF707株酵素と融合した沈降線を形成し、第2グループは強いクロス反応を示すがスパーを生じた。第3グループは弱いクロス反応を示し、第4グループは全く反応しなかった。この結果は、サザン解析の結果とよく一致した。次いで4つのグループからそれぞれ代表的な菌株を選び、コスミドを用いてゲノムライブラリーを作製した。このライブラリーからbph遺伝子を含むクローンが見いだされ、BP完全代謝をコードする遺伝子群のサブクローン化と解析を行っている。
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