ビフェニル(BP)資化菌は環境中に広く分布しており、本研究において32株のBP資化菌についてBP代謝(bph)遺伝子の相同性、BP環開裂酵素の免疫学性質を検し、BP資化菌を4つのグループに分類した。ついで、代表的なビフェニル(BP)資化菌Pseudomonaspseudoalcaligenes KF707株のBP代謝遺伝子(bph)クラスター、11.3kbの全塩基配列を決定した。bphクラスターの各遺伝子はトルエン資化菌P.putida F1株のトルエン代謝tod遺伝子クラスターのそれと遺伝子構成が類似しており、各遺伝子の塩基配列は約60%の高い相同性を示した。しかし、両代謝系の分解特牲は明らかに相違していた。ビフェニル資化KF707株のトランスポゾン変異株にトルエン代謝tod遺伝子を、逆にトルエン資化F1株にbph遺伝子を導入することにより相互の相補試験を行った。その結果、ビフェニル代謝系においては、初期酸素添加酵素がトルエン代謝の障害になっており、F1株のトルエン代謝系においては環開裂物質加水分解酵素がビフェニル代謝の障害となっていた。そこでトルエン初期酸素添加酵素遺伝子群を構成している4つのサブユニット遺伝子のうち、todCIC2の2つの遺伝子を広宿主ベクターにのせ、ビフェニル資化菌KF707株に導入するとトルエン資化能が獲得された。一方、トルエン資化F1株にbphD(ビフェニル環開裂物質加水分解酵素遺伝子)を導入するとBP資化能が生じた。ビフェニル資化菌は他の芳香族化合物資化菌と同様、リグニンの末端分解に関与しているものと考察した。
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