研究概要 |
本研究は著者等の発見したペプスタチン非感受性カルボキシルプロテアーゼ(CP)のうち,Pseudomonas sp.No.101CPに的を絞って,本酵素の構造と機能の解析,特に触媒残基の同定を目的とする。本酵素は原核生物由来の最初のCPでありその全一次構造は既報のいずれのCPとも,また,CP以外のタンパク質とも相同性がない。更に,既報のCPに例外なく,保存されている活性中心アミノ酸配列もない極めて特徴の高いCPである。 1.触媒残基の同定(チロスタチンを応用して) 著者の分取したチロスタチン(N-Isovaleryl-Tyrosyl-Leucyl-Tyrosinal)をモデルとして,3種類の誘導体を合成した。そのうち1つ,N-benzyloxycarbonyl-L-tyrosine-2,3-epoxypropyl estrが本酵素を拮抗的に阻害することを認めた。今後この阻害剤を使用して,触媒残基の同定を行う。 2.高発現系の確立 本酵素はアミノ酸587残基のプレプロ体として生成され,その後,プロセッシングを受けて,372アミノ酸残基の成熟型CPとして分泌されることが遺伝子解析により判明した。今回,この組替え体酵素の高発現系の構築を検討し,pKKシリーズのベクターを使用する高発現系を確立した。また,プレプロ体の役割についても検討し,プロ領域は成熟型酵素の活性化に関与していることを推察した。 3.触媒残基の同定(部位特異的改変体を使用して) 1.で触媒残基の候補として絞られたアミノ酸残基について,部位特異的改変体を作成し,野生型CPと改変体を反応速度論的に比較検討することにより,触媒残基の確定を行う予定であったが,触媒残基の同定に至っていないので本項目の実験は今後の課題である。
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