研究概要 |
チモシーがまの穂病菌感染によってチモシー植物体(チョーク)に生成する抗菌物質の検索を行なった。チョークをエタノールで浸積し抽出物の酢酸エチル可溶区を種々のクロマトグラフィーで分図した。バイオアッセイにはCladosporium herbarumによるバイオオートグラフィーを用いた。その結果以下の13種の新化合物を単離し、立体化学を含めた構造決定を行なった。 1。チョコール類として現在までチョコールA-Gが単離されているが、新たにH、I(メチルH)、J(ハイドロキシH)、K(デオキシD)、L(ハイドロキシK)が単離された。また、チョコール類の酸化されたアルデヒド化合物チョコラールAとさらに酸まで酸化の進んだチョコール酸A-Dが単離された。これらの化合物のC.herbarumに対する抗菌活性は低く、酸化度が進むに従い活性が落ちることが明らかになった。2。リグナン類として2-exo-6-endo-bis(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-3,7-dioxabicyclo[3.3.0]octan-8-one,2-exo-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-6-endo-(4-hydroxy-3,5-dimethoxyphenyl)-3,7-dioxabicyclo[3.3.0]-octan-8-one,さらに2,7-dioxabicyclo[3.3.0]octan-6-oneを天然物として初めて見いだした。 3。チョークから単離したphytyl palmitateはC.herbarumに対して抗菌活は見られないが、菌糸密度が濃くなっていることが観察された。このことは、胞子の発芽率の上昇、発芽した胞子の菌糸生育速度の増大ないし胞子形成の促進などが関与していることが考えられた。
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