カニクサ(Lygodium japonicum)と同属のL.flexuosum、L.circinatumについても造精器誘導物質のGC-MSによる精査を行い、双方の前葉体培養液より主要造精器誘導物質としてgibberellin A_<73> methylester(GA_<73>-Me)を同定した。また、L.circinatumからGA_<20>-Me、GA_<70>-Me、GA_<88>-Meと4種の新GA様物質(monohydroxy-GA_<73>-Me様物質と考えられる)を検出した。ミズワラビ(Ceratopteris richardii)の造精器誘導物質についても、溶媒分画、HPLC等で精製し、酢酸エチル中性区より二つの活性分画を得た。 GA_<73>-Meがcyclo-GA_9から生合成される可能性を追求するため[^3H]cyclo-GA_9を化学的に調製しカニクサ前葉体に投与した。[^3H]cyclo-GA_9-Meは、主として、monohydroxy-cyclo-GA_9-Me様物質に代謝されたが、[^3H]GA_<73>-Meへも痕跡量変換される可能性が認められた。現在、カニクサ前葉体の場合に比べ数十倍から数百倍多量にGA_<73>-Meを生成するL.flexuosum、L.circinatum前葉体を用いて、[^3H]cyclo-GA_9の代謝実験を行っている。 GA_<73>-Me処理したカニクサ前葉体と無処理の前葉体各々からSDS-フェノール法により全RNAを抽出し、oligo-dTカラムでpoly(A)^+RNAを調製した。得られたpoly(A)^+RNAを用いてcDNAライブラリーを作成し、differential screeningによりGA_<73>-Me誘導性であると考えられる数個のクローンを得た。現在、それらのクローンがGA_<73>-Me誘導性であることの確認をノーザン分析により行っている。
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