本研究は油漬缶詰製造の最終工程である殺菌操作において、加熱による食品の栄養損失、および色、味覚、香りなどの感覚的要素の損失を最少限に抑えるための、有効適切な加熱及び冷却が行い得るような、最適な加熱殺菌処理の確立を目指すものである。そして本研究では電算機の発達した現時点の特徴を生かし、油漬缶詰内の伝熱において、この種の缶漬特有の缶内自然対流の効果を生かした、系内での正確な熱移動機構の電算機による解析により検討を行うものである。 本研究の最初の年に当る今年度は、先ず油漬缶詰の缶内上部の油性液体が存在する部分のみに着目し、この液体の加熱及び冷却時において発生する自然対流の有効利用の観点から、この自然対流が系内熱移動に与える影響について研究を行った。その主なものは次の各点である。 (1).缶詰内上部の油性液体のみが存在する部分を想定したモデル装置を作製した。即ち、任意の温度に設定できる加熱面を底面とした。密閉系の円筒形装置(高さ1.0〜10.0cm、半径8.64cm)を作製した。 (2).上記円筒形装置内に油性液体(オリーブオイル、μ25℃=0.06Pas)を封入し、この液体が自然対流による流動に生じる場合の、加熱面と液体間の熱移動と操作条件(加熱面温度、断面(半径)方向長さ、円筒高さ、液体の物性値等)との関係を調ベた。 (3).上記の実験に基づき、系内の種々な操作条件に対する加熱面からの熱移動について、熱伝達係数を得る関係式を作成した。即ち、<Nu>^^^-=0.22Ra^<0.24>(rw/H)^<-0.72>なお、ここでは「底面加熱の密閉系内自然対流熱伝達」として他の試料(水、空気)についても実験し、他の自然科学の分野にも適応できる一般的な式としてまとめた。(記号説明)<Nu>^^^-:平均ヌツセルト数(=H・h^^-//λ)、Ra:レイリー数(=Pr・Gr)、√<w>:円筒管半径[cm]、H:円筒管高さ[cm].
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