本研究は油漬缶詰製造の最終工程である殺菌操作において、加熱による食品の栄養損失、および色、味覚、香りなどの感覚的要素の損失を最少限に抑えるための、有効適切な加熱及び冷却を行い得るような、最適な加熱殺菌処理の確立を目指すものである.そして、本研究では電算機の発達した現時点の特徴を生かし、油漬缶詰内の伝熱において、この種の缶漬特有の缶内自然対流の効果を生かした、系内での正確な熱移動機構の電算機による解析により検討を行うものである. 本研究の2年目の年に当る今年度は、まぐろ等の油漬缶詰の殺菌を目的とした加熱工程、及び殺菌終了後の冷却工程において、魚肉内部の熱の移動現象に関する次の研究を行った。 (1).缶詰内に充填する試料として、マグロフレーク及びこれらの魚肉と同様の物性値を有するベントナイト・水混合物(水79%)を使用し、その缶内上部空間にサラダオイル(μ_<60C>=0.19g/cm・s)を注入して、ゲージ圧60cmHgで巻締めて実際の缶詰を作製し、その内部の温度分布の測定が可能な実験用モデル装置を作製した. (2).上記の実験用モデル缶詰における加熱及び冷却の各工程を、実際の缶詰の操作と同様な条件で与え、モデル装置内の固形充填物中の各個所の温度を測定し、経時変化を求めた.なお、系内の温度測定は超細線シース型の銅・コンスタンタン熱電対により行った. (3).缶詰内の固形充填物内部の熱の移動現象を解析するための基礎方程式を導き、これと前年度の研究で得られた実験式を使用して求めた境界条件と共に数値計算を行い、この計算結果と上記(2)の実験結果との比較検討をして、本数値計算の妥当性の確認を行い、良好な結果を得た.このことにより、本数値解析によってこの種の缶詰内充填物の熱移動現象について検討が可能であることを確認した. (4).以上の結果を受けて、油漬缶詰の種々の形状、形態、充填物の種類及び分量等、各種の操作条件での固形充填物内温度分布を非定常で数値計算し、各々の操作条件での冷点(Slowest Cooling Point)や温点(Slowest Heating Point)の位置を求める関係式を得た.
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