本研究は油漬缶詰製造における殺菌操作において、熱の介在による食品の栄養損失、色、味覚、香り等の感覚的要素の損失を最少限に抑えるための、最適な加熱殺菌操作の確立を目指したものである。そして本研究では電算機の発達した現時点の特徴を生かし、油漬缶詰特有の缶内自然対流を配慮した系内熱移動機構の電算機による解析により検討した。 1.本研究の初年度は油漬缶詰の缶内上部の油性液体が存在する部分のみに着目し、この液体の加熱及び冷却時に発生する自然対流が系内熱移動に与える影響について研究を行った。その主なものは次の通りである。 油性液体のみが存在する部分を想定したモデル装置を作製し、試料(オリーブオイル)を系内に封入して、この液体が自然対流によって流動を生じる場合の、加熱面と液体間の熱移動と操作条件(温度、缶の直径、缶の高さ、流体物性値)との関係を調べ、関係式を作成した。なお、こゝでは「底面加熱の密閉系内自然対流熱伝達」として、他の流体(水、空気)についても実験し、別の自然科学の分野にも適応できる一般式としてまとめた。 2.本研究の最終年度の2年目は、まぐろ等の実際の油漬缶詰の加熱及び冷却の各工程における缶内の熱の移動現象に関する研究を行い、以下の結果を得た。(1).実験用モデル缶詰(試料:マグロフレーク、ベントナイト・水混合物、サラダオイル)内の局所温度の径時変化を、実際と同様の操作条件で求めた。(2).この内部の熱移動現象を解析するための基礎式を導いて数値計算を行い、実測値と比較して本数値計算の妥当性の確認を行い、良好な結果を得た。(3).これらの結果を基に、油漬缶詰の種々の形状、形態、充填物の種類及び分量等、各種の操作条件での固形充填物内温度分布を油性液体の存在を配慮して非定常で数値計算し、各々の操作条件での冷点や温点の位置を求める関係式を得た。
|