前年度に得られた結果、および明らかとなった問題点をふまえて今年度は以下のような研究を行った。まず、タンパク質中に取り込まれたヘムcの電極触媒能を詳しく調べ、次いで各種ヘムタンパク質の電気化学亜硝酸還元触媒能を、その構造との関連において定量的に評価する。またヘムcとその他の化合物との複合系を用いてより高感度のセンサーを追求することとした。結果の概要は以下の通りである。 1.ヘムcタンパク質の詳細な電極挙動を知るための関連研究として、キノヘモプロテインの電極吸着挙動と吸着タンパク質の触媒機能を電気化学法および、表面分光法を用いて調べた。その結果、電極に吸着したタンパク質中のヘムc基は確かに電極と速やかな電子移動反応を行うことが明かとなった。 2.ヘムタンパク質としてミオグロビン、ヘモグロビンを検討したところいずれのヘムタンパク質もチトクロムcとどのような電気化学亜硝酸還元触媒能を有することが明かとなった。 3.ヘムタンパク質の代わりに、いくつかの低分子有機化合物を検討したところメチルビオローゲンが亜硝酸還元の電気化学触媒として働くことを見いだした。 4.さらにまたヘムタンパク質は亜硝酸の電解酸化反応も触媒することが分かった。 このように、酵素以外のタンパク質や有機物を用いても、バイオエレクトロカタリシスが可能であり、亜硝酸用のセンサーが期待出来ることが明かとなった。
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