申請者は新しい応答原理に基づく酵素機能電極の研究を進めて来た。本研究は酵素を用いずに、しかも同じ応答原理に基づく生体触媒電極をめざすもので、亜硝酸定量用のバイオセンサーを具体的な目標とした。まずチトクロムcのようなヘム基を持つタンパク質を触媒として用い、電極場でのこれらヘムタンパク質の亜硝酸還元能の詳細な検討を行った。その結果以下のような知見を得た。 1.炭素電極をもちいた電気化学測定において、溶液中にごく小量(0.4uM)のチトクロムを存在させると亜硝酸の電解酸化が低い過電圧でおこることがわかった。 2.この亜硝酸還元電流は溶液のpHに依存し、酸性溶液で大きな電流を与えた。 3.チトクロムcのこの効果はチトクロムcを100℃で30分処理しても変わらなかった。 4.滴下水銀電極を用いて、電流の性質を詳しく調べた結果、チトクロムcは電極に吸着した状態で触媒活性を示すことが分かった。 5.吸着ヘムcの電極挙動を詳しく知るための関連研究としてフラボヘモプロテイン、キノヘモプロテインの電極触媒機能を調べ、ヘムc部位で電極との電子移動が起こっていることを明らかにした。 6.これらの結果をふまえて、チトクロムcを固定化した炭素電極を作成し、その亜硝酸センサーとしての特性をしらべたところ、感度的には十分であるが再現生にやや問題があるという結果をえた。この点は今後の課題である。さらに、メチルビオローゲンのような低分子化合物が亜硝酸の電気化学還元に有効な触媒となることを見いだした。この触媒反応は中性条件下でも効率よく進行するなど、センサーとしての今後の展開が期待出来ると思われる。
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