研究概要 |
(1)アカマツ幹の精油を-80℃のシリカゲルカラムで炭化水素画分とマツノマダラカミキリ雌成熟成虫誘引物質を含む含酸素画分に分画し,室内生物検定(飛翔・歩行・忌避行動観察)を行った。その結果,炭化水素画分中に誘引物質の活性をマスクする物質が含まれていることが明らかとなった。 (2)葉の精油の炭化水素画分にもマスク物質が含まれる。葉の精油の含酸素画分には忌避物質が含まれる。 (3)TLCとGCを用いて,幹及び葉の精油の減圧蒸留残留油からマスク物質を95.1〜98.1%の純度で分離した。 (4)この粗物質は雌成虫の誘引源への定位行動を停止させ,その場で静止姿勢を持続させる新規な作用を示す。 (5)この粗物質はきわめて不安定で,例えば,n__--ペンタン溶液として暗所でN_2下,-20℃で保存しても初めの10日間で60%が別の物質に変化してしまう。但し,油状物は比較的安定である。 (6)TLC/GCに代わる方法として,減圧蒸留残留油からリクロソルブRP-18カラムを用いた逆相HPLCによる迅速で効率的なマスク物質単離法を確立した。 (7)今後,単離物質についてさらに詳細に検定し,マスク物質を同定する。その上で,この新規な作用の機作を解明したい。
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