研究概要 |
長野県,菅平のミズナラ(Quercus mongolica)とシラカンバ(Betula platyphylla)を主体とする林内に1992年4月26日に800g/m^2の尿素を施与し,処理後の菌根の動態とH〜A層の微小真菌量と細菌量の動態との関係を調査した。処理区には,9月にCalocybe leucocephalaが,10〜11月にHebeloma spoliatumの2種の菌根菌が発生した。処理区には6月にAmanita sp.,8月にAmanita vaginataとRussula sp.,10月にInocybe sp.がそれぞれ発生し,処理区で顕著な菌相の変化が生じることが確認された。非処理区では,微小真菌量は6月に最大値を,総細菌量とクリスタルバイオレット耐性細菌量は4〜6月に大きい値を示した。処理区では,微小真菌量は7月に最小値を示し,総細菌量は5,6月と急増したのち漸減し,クリスタルバイオレット耐性細菌量は7,9〜11月に小さい値を示した。非処理区では,常に一定レベルの外生菌根量が確認されたが,処理区では,5,6月には黒変した菌根が多数みられるようになり,6,7月に外生菌根量の顕著な減少がみられた。8〜9月には菌根の再生が観察され,10月には多量の菌根の存在が確認された。 以上のことから,尿素処理区では既存の菌根菌は他の微生物の活動が盛んになる5〜6月に次第に死滅し,分解され,他の微生物の活動が低下する7〜8月に尿素処理地の環境条件を好む新たな菌根菌(C.leucocephalaとH.spoliatum)が侵入を開始するものと推察した。
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