研究概要 |
森林土壌の共生系に対する環境収容力を解明するための研究の一環として,林内の尿素施与地における外生菌根形成能を調査し,その林のもつ潜在的な外生菌根形成能を調査した。1992年4月14日に千葉県清澄山のアカガシ,モミ,アカマツが優占する混交林の林床に800g/m^2の割合で尿素を施与したところを前年に引き続き調査した。土壌pHと含水率は,施与区と尿素無施与区(対照区)でほぼ同一の値を示すようになった。施与区には前年度に引き続き,アシナガヌメリとオオキツネタケが発生した。一方,対照区に発生した外生菌根菌はヒロハウスズミチチタケ,ドクベニタケ,トビチャフウセンタケ,キハツタケ,未同定のベニタケ属の菌,及び未同定のチチタケ属の菌の発生がみられた。乾燥重量でみた外生菌根菌の子実体量(発生量)は,施与区では,6月0.25g/m^2,7月1.39g/m^2,11月2.82g/m^2であった。一方,対照区におけるそれぞれの調査月毎の外生菌根菌の発生量は,6月0g/m^2,7月0.01g/m^2,11月0.05g/m^2であり,施与区における外生菌根菌の平均発生量は,対照区のそれの約2.2倍であった。この値は,尿素施与1年目の発生量の0.2倍であり,施与区におけるアシナガヌメリとオオキツネタケの菌根量の低下が少なくとも6月以降で生じていることを示唆している。以上のこと及び昨年度の調査結果から,外生菌根菌の子実体の発生量は尿素施与後約半年後に最大値に達することが判明したため,森林土壌の環境収容力を尿素施与によって推定するには,施与後最初の子実体発生時の値が有効であると推察した。
|