本研究の目的は、第1に各種の林冠撹乱を受けた林分が自然状態で修復・再生する過程を明らかにすること、第2に林冠ギャップ生成前後の更新稚樹の成長反応を明らかにすること、第3にこれらの成果を施業に応用するための手法を検討することにある。 今年度は、以下の3点について実施した。 1.立山ブナ坂国有林、新潟大学佐渡演習林および新潟県上川村村有林の天然林および広葉樹二次林の固定調査地において、昨年に引き続き、林冠木の毎木調査およびコンパス測量により立木位置を計測した。プロッターで出力した立木位置図に現地で樹冠投影を記入した。昨年度開発した立木ごとの投影樹冠をデジタイザーでトレースしながらコンピュータに入力するプログラムを使い、特定の個体や一定の条件を満たす個体の樹冠投影図を出力し、それをもとに林冠条件の異なった林内で更新した稚樹の種組成や成長を調査した。 2.上川村の広葉樹二次林において林冠の一部を人工的に疎開し、ギャップ内での更新試験を開始した。 3.昨年に引き続き、圃場の異なる被陰条件下に植栽されたブナに対して、林冠ギャップに模して一部の被陰を解除し、被陰解除前後の成長経過を測定した。 なお、ブナ林における林冠疎開の程度と落下種子量の関係については、本補助金交付以前から継続して研究を続けてきたが、その成果が日本林学会誌に研究論文として掲載された。
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