本研究の特色の一つは、天然林の更新機構を森林再生の技術に応用するところにある。天然林では自然状態の攪乱体制と修復の様式、とくに攪乱前後の林床に定着し林冠を修復する樹種の進入・定着・成長などの生態的特性を明らかにすること。一方、圃場ではブナ稚樹を材料に用い、被陰と解除を実験的に行った。さらに、二次林では、林冠の一部を人工的に疎開させ、目的樹種を効果的に更新させるための実証的な試験を開始した。 本年度は、以下の継続調査を実施するとともに、3年間の結果をとりまとめた。 1.ブナ・スギ・イタヤカエデ天然林およびブナ・トチノキ天然林が自然状態で修復する際の各樹種の更新特性の違いを比較検討した。その結果、林冠や林床の条件によって樹種ごとに稚樹の出現傾向が異なることが明らかになった。 2.被陰処理区の一部が毎年解除するように設計した圃場条件下に種子から3年間育てたブナ稚樹の成長解析を行った結果、実生発生後の被陰解除年数の違いによってその後の成長が著しく異なることが明らかになった。 3.ブナ・ミズナラ・ホオノキ・イタヤカエデが優占する二次林の構造的特性を樹幹解析の手法を用いて解析した結果、樹種によって太枝単位のモジュール構造と樹冠拡張の挙動の違いが明らかになった。 4.3カ所の広葉樹二次林において林冠の一部を伐採し数個の人工的な更新面で生態的な手法による人工および天然更新試験を開始した。今後、人工ギャップ内の光環境と更新稚樹の定着や成長の変化を実証的な試験によって研究を継続する予定である。 5.3年間の調査から得られた天然林での再生様式と圃場での実証試験など一連の結果を併せて実際の施業に応用するための生態学的な手法について検討した。考え方の一部を要約して共著の一部に記述した。
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