樹冠構成要素の中でも特に重要な意味をもつ枝の、力学的性質と荷重が負荷されたときの挙動に重点をおいて研究を行った。さきに開発した立木生枝の弾性係数の非破壊的測定法が有効に使用された。 測定対象としたスギ、ヒノキ、カラマツ3樹種ともに、生枝の弾性係数は、夏から秋、冬へと進むにつれて次第に増加し、特に氷点下の気温になったとき著しい増大が見られた。冬から春にかけて弾性係数は次第に元に戻り、夏には前年と同レベルになった。この変化は生枝の含水率の変化傾向とほぼ一致するものである。 特に含水率の高いスギは、季節変化の振幅が非常に大きく、弾力性が小さくなる冬季に多くの冠雪があると、枝の雪折れが生ずる可能性のあることが計算上示され、また厳冬季の現地実験から実際的にも確かめられた。 なおスギの場合にのみ、枝の年齢にともない弾性係数が有意に増大していた。スギの枝はヒノキ、カラマツと違って、年齢とともに直径成長が鈍くなり、比重が大きくなる。また木質化も他の樹種より遅れて進行する。これらが主な理由と考えられる。 外部荷重の影響は個々の枝葉を通して、立木の樹冠全体に及ぶ。従って樹冠の形状と構成を知ることは重要であり、本研究でも写真解析に基づく簡易な樹冠計測法を提案した。 伐採・搬出作業の観点からも研究を行った。一つは立木伐採に際しての、枝の衝撃緩和作用の理論、実験両面からの解析、もう一つはかかり木のメカニズムの実験的研究である。後者で、枝葉の形状が樹冠同士の接触摩擦力に及ぼす影響を明らかにして、スギよりもヒノキの方がかかり木になりやすい理由を説明した。またモデル実験に基づき、かかり木における樹冠の接触抵抗力の大きさを推定した。
|