研究概要 |
本研究は,代表的林業地域・経営類型の実態を調査し,林業・森林管理・山村の現状とそこで新しく生起しつつある亊態を明らかにし,今後の方向性と取るべき施策についと示唆を得ようとするものである。 代表的地域・経営類型として,(1)北海道天然林国有林型,(2)裏日本民・国有林型,(4)中部日本国有林型,(5)吉野・尾鷲旧林業地型,(6)西南日本民有林型を差し当り想定し,平成4年度は(1),(4),(5),(6)を調査した。新しい亊態の進展は,樹木の成長の早い四国・九州の遠隔地山村において見られ,第三セクター設立を核として労仂力確保など林業振興策が取られているが,第三セクターの効率的経営の実現が課題である。高知県嶺北地域では,集材機+プロセッサの作業仕組みによる能率向上を契機とする民間の素材生産チームの形成により林業活性化の兆しが見られ今後の方向が注目される。 先進林業地であった吉野・尾鷲地域においては,在来の所有・経営・市場構造がむしろ桎梏になって生産力縮小が著しく,対策を取ろうとする一部の動きが始まったものの多数の大山林所有者は依然経営者的ビヘービアを取ろうとせず、今後の生産力維持と森林管理の困難が予想される。 国有林地帯については(木曾),施設化・合理化が進めやすい流通・加工過程での動きが見られるものの,民・国一体の流域管理システム形成に踏み出したとは言い得ない段階であり,山元集落の過疎化の進行は題著であり,今後,秋田地方等で調査を続ける必要がある。 総じて,危機的状況にある林業と森林管理に関して,人工林成熟化と機械化を契桟として,新たな生産力構築の動きが見られる.山村問題に関しては,独自の山村をむしろ取らない政策状況の中で,林業の新たな生産力形成と手掛りにして,過疎化に歯止めをかける方向よりない状況にある。その契機は私的生産活動の活性化にある。
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