本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1)サワラの分布中心域である中部地方の御岳東面にて平成4年7月にサーベイ調査を実施した。サワラは主に谷部の岩の多い累石地で出現し、伏条によって個体群を維持していた。このような立地でサワラが個体群維持できる要因として、伏条枝が岩をうまく利用して立ち上がりが可能であることであった。 2)長野県木曽郡上松町上松営林署管内小川国有林内にサワラ天然林内に40×50m^2の永久プロットを林分の発達段階別に4個設定し、プロット内のdbh≧5cmのすべての樹木の樹種名、dbh、生死、位置の計測記録(備品の超音波距離測定器を使用)を行った。サワラに関してはプロット内の下層のサワラのパッチ(伏条によって形成される)のすべての位置、長径と短径、高さ、パッチ下の基質の状態(土壌、石、倒木、根株など)を計測記録し、伏条更新の実態を調査した。林冠ギャップでは、サワラの成長調査を行った。また、サワラの年種子生産量と実生の発生、生存調査を行った。これらの現地調査は平成4閣5、7、9、10月に行った。その結果、サワラはヒノキが行い得ない伏条を行ってパッチを形成することで、(1)実生では侵入不可能なサイトにもパッチを拡大し前生樹として存在できること、(2)閉鎖林冠下においてもある程度の被陰には耐え得ること、(3)ギャップが形成された場合、そこを有利に占有することができること、などが明かとなり、伏条を利用した天然更新施業を考える上で、重要な情報が得られた。 3)パッチ動態解析用のパソコンプログラムを作成後、本年度のデータ入力を行い、パッチ動態解析を行った。 これらの最新の成果は第104回日本林学会大会で発表する。
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