1.サワラの生態的特性:更新特性に関して、更新木は閉鎖林冠下の暗い条件でも前生樹集団としてパッチ状態で出現し、伏条更新によるものであった。さらに、風害で倒れ、接地した更新木の枝が独立個体状に再生するという、サワラではこれまで記録のない更新様式が発見されたため、これを独自に倒伏更新と名付けた。サワラがこのような伏状・倒伏という更新手段を有することは、次世代木が同一場所で継続的に更新可能な同所的更新にきわめて有効と考えられる。更新木は岩石を含めて様々な地床上でも出現可能であった。また、更新木の樹形は、閉鎖林冠下では伏条更新に、明るい林冠ギャップ下では上長生長によるギャップ更新にと、可塑的に変化した。2.サワラの林分維持機構:土層発達タイプの林分では、撹乱による断続的な林冠ギャップ形成とそれにともなうギャップ更新による不連続更新で維持されていたが、下層樹冠層が存在する限りたとえ林冠ギャップが形成されたとしてもサワラは更新できず、このような林分では下層樹冠層を破壊し裸地を形成するような撹乱がなければいずれサワラは消失すると予測された。土層未発達林分では、サワラは旺盛な連続的更新を示し、岩石占有率の高いより未発達な林分でより旺盛であった。このような地表特性を持つ林分では下層樹冠層が形成されないこと、サワラの伏条・倒伏更新特性がそこでの更新にきわめて有利に作用すること、同程度の撹乱を受けた場合、土層発達林分よりも撹乱の影響度が大きく林が更新に適した状態に絶えずあること、倒伏更新材料となる倒木が高い頻度で供給されることなどが、その原因と言えた。
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