斜面に降雨の形で供給された水はその一部が土中の空隙中に貯留され、土層の下方へ移動する。空隙中に水が留まることで土層全体の重量が増加するため、降雨の開始にともない土層の変形も開始する。日浦は模型斜面における崩壊実験で、降雨開始後の土層表面の変形の様子について観察した。そして、土の変形特性にもみられるクリープ挙動を利用した斉藤のクリープ破壊の考えにしたがって考察を進めた。その結果、第1次クリープが欠如していること、第3次クリープ領域に入った後も土層の変形は継続し、一定値に収束していくことがわかった。また、第2次クリープのクリープ変形速度は相対的に早く、予測式により求められたクリープ破壊時間もかなり早いものとなった。これらに対する説明として、供試土が砂質土であるため土層の変形によって生ずる過剰間隙水圧の消散が早いことがまず考えられた。そのため第3次クリープ領域に入って土層内で破壊が生じても過剰間隙水圧の消散が早く、土層は必ずしも急激な流動化には至らないと考えられる。一方、水収支からみていくと第3次クリープ領域は表面流出が始まる時期である。土層の変形は、土層への流入水量と斜面下部からの流出水量がほぼ均衡する段階まで継続することもわかった。海堀は前年度に引き続き、土と水の混合物を外力によって流動状態とし、試料中に発生する間隙水圧の時間的推移を追った。細粒のシルト分を含む土では、前年度の標準砂の場合に比べて、間隙水圧の消散に時間を要することが解った。このことは流動状態を維持するのに間隙水圧が大きく影響を及ぼしていることを示すものである。また、沈殿した試料は時間とともに強度を回復するが、これは間隙水圧の消散による圧密の進行により説明ができており、流動と体積の双方に共通したメカニズムが考えられることが解った。
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