近年、わが国でも体育館をはじめとして大型木造構造物が普及しはじめ、地震や台風の時には集成材部材や接合部に大きな荷重が作用することが多くなり、破壊の危険性も増しているが、実際に荷重を受けている集成材部材の破壊過課や亀裂伝播挙動はほとんど解明されていない。そこで、上記の研究課題を遂行することとなった。この研究は平成4年度から平成6年度までの研究で、本年度は下記の研究を行った。 1.集成した時の接着層の位置が破壊強さへ与える影響の静的破壊試験及び動的繰り返し試験による解明 接着層の位置が破壊強さへ与える影響を、接着位置の異なる数種の試験片について、動的疲労試験機を用いて、両振り繰り返し曲げ荷重を与えて解明した。その結果、年輪が存在しない木材における疲労破壊過程の第二部分(き裂伝ぱ定常部分)に接着層をおくとき、破壊強度が最大に増加することが明らかになった。接着層の位置が、応力集中部分(切欠先端付近)に位置すると、破壊強度の増加が少なくなることが明らかになった。他方、接着層の位置が切欠先端の反対側(試験片幅の約80%)にあるとき、接着層の存在によって破壊強度の増加はほとんど起こらないことが明らかになった。静的破壊試験は現在検討中である。 2.亀裂伝播測定手法を用いて接着層が亀裂の進行に与える影響の解明 年輪が存在しない木材におけるき裂伝播定常部分に接着層をおくとき、き裂の伝播に大きな停滞が起こる。これが強度の増加になって現れる。特に、この効果は接着層の位置が試験片幅の約20%において最大となった。このき裂の停滞は、接着層及び接着層の前と後において現れることが明らかになった。これらの知見は、平成5年8月に開催される第43回日本木材学会大会において発表する予定である。
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